関門海

高品質のトラフグを日常食に。
夏でも美味な「熟成ふぐ」とは

2021.7.7

 

夏場にフグ?……そう思った方には、この記事が “フグは冬の美味” という考えを変える機会になるかもしれない。

 

 

“フグは天然モノに限る” という傾倒もしかり。さらに価格においても従来のトラフグ相場に一石を投じた「玄品」は、フグ消費量日本一の大阪で生まれた。

 

 

画期的な旨味成分向上技術で、天然に引けを取らない旨味を叶えた養殖トラフグ、この「玄品」を自社ブランドに持つ株式会社関門海は、近年飲食店におけるトラフグの店舗取扱高で国内随一を維持している。

 

 

トラフグは養殖魚の中でも特に育成が難しい魚で、国内のトラフグ養殖は、1964年に山口県で成功した事例が契機といわれるほど歴史が浅い。関門海の創業はそれから25年後の1980年。

 

当時天然ものを看板にする高級店が多い大阪で、関門海は創業後すぐに養殖トラフグに着目しました。産学や流通業の垣根を超え、本物志向の人々と手を携えることにより、高級魚とされてきたトラフグを「本当においしく、安く、安全に提供をすることによってお客様に豊かさと幸せを味わっていただきたい」という想いで美味しさを科学的に追求し始めました。

 

と語るのは、現在の関門海代表取締役社長・山口久美子さんだ。

 

まずは、店舗の生け簀に元気なトラフグを届けられるよう、仲卸などを介さず水揚げから最短で店舗に直送できる独自の流通ルートを構築しました。今でこそ「産直」は当たり前ですが、これは当時の流通革命になると同時に、大幅なコストダウンにもなりました。それでも、調理直前まで生け簀で泳ぐ活魚でも、時季によってはトラフグ特有の弾力や旨味が物足りないことがあり・・そこで“熟成”というアイデアが生まれました。

 

 

 

美味を高める冬に水揚げ、その旨味をさらに引き上げる

旨みを蓄えた冬場に、養殖トラフグを一斉に水揚げしてしまうという。その最良の状態からさらに旨味を引き出し、それが通年味わえるよう開発されたのが、「玄品」独自の熟成・凍結・保管技術だ。トラフグの身質は熟成に適していると言うのは、当社の商品開発を率いる江崎正樹さん。

 

冷凍技術においては、食材が凍るまいと分泌するアミノ酸や糖質などの旨味成分に着目し、温度管理により独自の旨み成分を引き出す技術を確立しました。

 

さらに、その旨味成分をドリップで出さずに細胞内に閉じ込めたままにする低温熟成の技術を開発したことで、「玄品」は天然と同等の弾力や味わいを蓄えた、瑞々しい身質になりました。

 

冷凍のまま各店舗に運ばれ、解凍にも専用の解凍機を使用するため、場所も季節を問わず、いつでも美味しいトラフグを楽しんでいただけます。

 

水揚げから冷凍・熟成・出荷に至るまでの開門海独自の技術とシステムは、日本だけでなく、フグ食が盛んな中国や韓国でも加工製法特許を取得している。

 

中国は日本よりフグ食文化の歴史が深いが、自国より美味しく安心して食べられると、来日のたびに訪れる中国人観光客も多いという。その味わいだけでなく、フグは海洋性コラーゲンやナイアシンなど美容で注目される栄養素をはじめ、タウリンなど健康を促す栄養素も豊富だ。

 

昔はトラフグといえば大人の贅沢というイメージでしたが、今は健康志向が高まっているせいか、昨年はGo To Eatキャンペーンを利用した若い世代のお客様がずいぶんいらっしゃいました。ふぐちりをつつきながら、スマホのゲームに興じているカップルとかもいて。

 

と山口さんは苦笑する。Go To Eatキャンペーンが始まったのは昨年の初夏。フグは冬という感覚がない若い世代にとっては、健康食にもなる美味しいトラフグがリーズナブルに食べられる好機だったのかもしれない。

 

 

もっとも、いつでも美味しいトラフグを気軽に食べられることは、年代を問わず嬉しいものだ。

 

 

 

その年の相場で大きく変動するトラフグの価格を安定させ、トラフグの美味の基準から、天然か養殖かという線引きを払拭した「玄品」。山口さんは、これから日本中でフグを一般食にしたいと語る。

 

 

大阪で店名を名乗ると「トラフグの価格破壊した店やな」と言われることもありますが、関東以東ではまだ“トラフグ=高い”という印象を否めません。そしてフグ食が盛んな関西でも、フグは冬の味覚という感覚が根強いのが現状です。

 

でも「玄品」なら夏場もてっさや焼きふぐで楽しめますし、熟成ならではの弾力と味わい深さで、フグが色々な料理で食べられることを知っていただけます。リーズナブルなトラフグを世に出したことで同業者からのバッシングもありましたが、フグ料理は日本文化のひとつですし、何より、美味しいものはより多くの人と共感したいと思っています。