南部箒がいま選ばれる理由。高倉工芸が体現する「使うほど好きになる道具」

南部箒がいま選ばれる理由。高倉工芸が体現する「使うほど好きになる道具」

部屋の隅に落ちた埃や、カーペットに絡まった髪の毛。掃除機をかけたはずなのに、取り切れていない——そんな経験はないでしょうか。

 

掃除機での掃除では、繊維の奥に潜り込んだ細かなゴミには届かないことがあります。そこで改めて選ばれているのが、箒という選択肢。なかでも岩手県九戸村で作られる「南部箒」は、独特の縮れた穂先がゴミを掻き出す構造で、掃除機とはまったく異なるアプローチで汚れに向き合います。

 

カーペットや絨毯の奥に潜んだ細かなチリやホコリ、衣類についた毛玉まで。南部箒の縮れた穂先は、床掃除にとどまらず、幅広い場面で活躍します。

 

そして何より、使うほどに手に馴染み、正しく使えば20年以上使い続けられます。大切に作られた道具を長く使い続けることで、暮らしにささやかな充足感をもたらしてくれる——そんな高倉工芸の南部箒の魅力を、紐解いていきます。


南部箒とは

高倉工芸 南部箒

南部箒は、岩手県九戸村で栽培される「ホウキモロコシ」という植物を原料に作られる、日本の伝統工芸品です。江戸時代から続く歴史を持ち、現在もこの土地でしか本来の品質を再現できない、希少な手仕事の道具です。

 

岩手県九戸村 高倉工芸が手がける南部箒は、土づくりから種まき、収穫、選別、編み上げまでの全工程を、一年という時間をかけて仕上げています。

 


南部箒の独自性

南部箒の最大の特徴は、穂先に現れる独特の「縮れ」です。

 

南部箒 穂先の縮れ

 

この縮れは、岩手県九戸村にオホーツク海側から吹き込む冷たく湿った北東風「やませ」がなければ生まれません。同じホウキモロコシを別の場所で育てても、あの縮れは出ない。九戸村の気候だけが、南部箒にしかない素材をつくっています。

 

加えて、市販の箒は穂先を切り揃えているものがほとんどですが、南部箒はあえて不均一なまま仕上げます。縮れと不均一な長さが組み合わさることで、フローリングの溝や畳の目の奥、絨毯の繊維の隙間まで入り込み、力を入れなくてもゴミを掻き出すことができます。

 

もうひとつ見落とされがちな特性が、静電気の起きにくさ。ホウキモロコシは静電気が起きにくい素材のため、ゴミが穂先に残りにくくなっています。掃除後にいちいち手でゴミを取り除く手間がありません。

 

縮れの強さは、その年の自然環境に左右されます。特に縮れが強く出た素材はごく少数しか取れず、最高級品になると100万円を超える長柄箒も存在します。「世界に一本しかない箒」というのは、比喩ではなく事実です。

 


高倉工芸について

その「世界に一本しかない箒」を作り続けているのが、岩手県九戸村の高倉工芸です。

 

代表の高倉清勝さんはアグリ管理士の資格を持ち、ホウキモロコシの土づくりから種まき、収穫まで自ら管理しています。農薬は使用しません。あの独特な縮れを最大限に引き出すために、栽培の段階から手間をかけているのです。

 

高倉工芸 栽培の様子

 

箒ができるまでには、一年がかりの工程があります。

土作り・種まき
手刈り・釜茹で・乾燥
15段階の選別
職人による編み上げ

 

春、雪が解けたころに土を耕し、種を蒔く。夏になると一本一本手で刈り取り、ベテランの職人が6人がかりで作業しても1か月半かかります。釜茹で、乾燥、そして選別。ホウキモロコシを15段階に丁寧に分けるこの工程には、5人の職人が1か月半以上を費やします。秋から冬にかけて、職人が手と足でしっかりと締め上げながら編み上げ、ようやく一本の箒が完成します。

 

高倉工芸 編み上げ工程

 

By Emotionが取り扱うオーガニック長柄箒は、化学物質過敏症のお客様からの「そういう人でも使える箒を作ってほしい」という一言がきっかけに生まれました。人の手が触れる箇所に化学繊維を用いない染糸を作るため、各県の職人の協力を得て3年間の研究と開発を重ね、完成したオーガニックの絹糸です。紅花・藍染・渋柿、3色の天然染料が、箒の持ち手を静かに彩ります。

 


赤(紅花)
天然染料の紅花から生まれる、落ち着いた赤

青(藍染)
深みのある藍。日本の伝統色の静けさ

ベージュ(渋柿)
柿渋染めの素朴な温かみ

暮らしの中のこんな場面で。お掃除以外にも重宝する南部箒

音を気にせず、朝と夜の掃除に

 

掃除機のような音が出ないため、時間を気にせず使えます。仕事や子育てで忙しい方の夜の掃除、家族がまだ眠っている早朝のひととき。気になる場所をさっと掃く、そんな使い方ができます。腰を曲げずに使える130cmの長柄タイプなら、廊下や部屋全体の掃除も身体への負担なく続けられます。

掃き掃除に使いやすい長柄タイプ

オーガニック長柄箒

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絨たんやカーペットの、奥に潜むゴミに

 

縮れた穂先は、縮れが強いほどコシが出る性質を持っています。そのコシが絨毯やカーペットの繊維の奥まで入り込み、絡まった髪の毛やペットの毛も力を入れずに掻き出します。掃除機をかけた後に南部箒で仕上げる、という使い方をしている方も少なくありません。

 

南部箒で絨毯を掃く様子

絨たんやカーペットのお掃除に

オーガニック小箒

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使わない時間も、空間の一部に

 

土や砂を外に掃き出すのはもちろん、不均一な穂先は畳やフローリングを傷めにくいため、玄関先のちょっとした汚れにも気兼ねなく使えます。掃除をしていない時間も、壁に立てかけておくだけでインテリアの一部になる——その佇まいも、南部箒が選ばれる理由のひとつです。



洋服や着物のお手入れに

 

箒といえば掃除の道具、と思われがちですが、南部箒の柔らかな穂先は衣類のブラッシングにも使えます。高倉工芸の和洋服箒は、縮れの大きな穂先が生地にふんわりと当たり、毛羽立ちを整えながらツヤを取り戻します。

 

実は、昔の仕立て屋は商品を納める前、箒で服を整える工程を欠かしませんでした。髪を櫛でとかすように、洋服も箒で整える——そんな手仕事の知恵が息づいています。

 

お気に入りの一着を、ブラシではなく箒で手入れする時間。それ自体が、ものを長く使い続ける丁寧な暮らしの実践になります。

 

南部箒で洋服を手入れする様子

洋服をワンランク上の仕上がりに

オーガニック和洋服箒

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ペットのブラッシングに

 

本来掃除道具のはずの箒が、ペットのお手入れにも一役買っています。犬や猫の毛並みを整える、ペット用「グルーミングブラシ」も高倉工芸の人気アイテムです。

 

穂先は鋭いコームではなく、柔らかなホウキモロコシの天然繊維。撫でているうちに目を細め、背中を押しつけてくる——普段ブラッシングを嫌がる子も、うっとりした表情を見せることがあるそう。人間の1/3の厚さといわれる、デリケートな犬の肌にも安心してお使いいただけます。毛並みを整えるだけでなく、マッサージのような感覚で血行を促す効果も。

 

南部箒でペットをブラッシングする様子

ペットが喜ぶ、癒しの箒

犬・猫用グルーミングブラシ

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長く使うためのポイント

南部箒を20年、30年と使い続けるために、いくつか知っておきたいポイントがあります。

 

1

物はたたかない、隙間に差し込まない

布団をたたく、ゴミを落とすために段差にトントンと当てる、細い隙間に差し込む(穂先が逆方向に折れます)——こういった使い方はしないでください。

2

穂先は切らない

穂先を切ると、不均一な長さによる掃く力が落ちてしまいます。穂先が汚れてきたときは、中性洗剤を溶いた水かぬるま湯ですすぎ洗いをして、陰干しでしっかり乾燥させてください。梅雨の時期は中心部が乾きにくくカビが生えることがあるため、特にご注意ください。

3

力を入れて掃かない

穂先が中折れするほど力を入れても、かえってゴミは取れず穂先を傷めてしまいます。また、同じ方向にのみ使うとクセがつくため、できるだけ両方向でお使いください。使わないときは掛け紐を釘などに掛けて吊るすか、穂先を上にして立てかけて保管してください。

 

正しく使うこと自体が、道具との向き合い方を教えてくれます。手をかけるほど応えてくれる——それもまた、南部箒が長く愛される理由のひとつです。

 


いいものを長く、という選択

高倉工芸 南部箒

南部箒は、決して手軽な値段の道具ではありません。けれど、正しく使えば20年以上、世代を超えて使い続けられます。買い替えるたびに捨てていく道具とは、根本的に違う在り方です。

 

岩手県九戸村の気候だけが育てるホウキモロコシ、職人が一年をかけて仕立てる手仕事、そして掃除にとどまらない暮らしへの寄り添い方。高倉工芸の南部箒には、ひとつの道具がここまで深く作り込まれることの豊かさが詰まっています。

 

大切に作られたものを、大切に使い続ける。その選択そのものが、暮らしを豊かにしてくれます。その一歩を、南部箒から始めてみてはいかがでしょうか。

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高倉工芸

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