ICONIC STAGE

「育てる・作る・食べる」
1棟のビルで叶える第6次産業

2023.9.6

 

1棟のビルで「第6次産業」を実現

 「地産地消」は耳にしますが、「店産店消」という取り組みをご存知でしょうか。

 

 

神奈川県横浜市に誕生した食のブランド「ICONIC STAGE」では、棟のビル内で「育てる・作る・食べる」といった食の循環を完結させ、店産店消に取り組んでいます。

 

 

1階のカフェスペース

 1階のカフェスペース

 

 

元々老朽化していた小規模ビルを改装し、3階部分を水耕栽培のスペースすることで、数十種のハーブやエディブルフラワー(食用花)、葉物野菜たちをLEDの光によって完全無農薬で栽培。それらの食材は、2階のキッチンスペースではスイーツの材料に、1階のカフェでは摘みたての新鮮さを活かした料理やドリンクに使われています。

 

 

左から、3階の水耕栽培・2階のキッチンスペース・1階のカフェ

左から、3階の水耕栽培・2階のキッチンスペース・1階のカフェ 

 

 

そういった食の新たな循環に取り組んでいるのが、代表の吉備 カヨさん。

 

 

1次・2次・3次産業を融合することで、可能性を広げるとされる「第6次産業」。ICONIC STAGEでは、栽培、採取した食材を自ら加工し、販売まで手掛けることで「第6次産業」をビル内で見事に実現しています。

 

 

吉備カヨさん

吉備 カヨさん

 

第6次産業というのは特別珍しい話ではないですが、栽培・製造・提供までをビルの中で行うというのは他ではあまりないかもしれません。なかでも外販ありきで製造加工業の免許を併せ持ちながら、栽培から提供の場面があるという一連の流れは、うち独自のスキームです。

 

普通、生産者は自分が栽培したものが、どう商品になり消費されるかまで見えてないことがほとんどだと思います。それがうちの場合には「この商品を作りたいから、それに必要なこれを栽培しよう」というように流れが逆なんですよね。

 

栽培者も製造者も提供者も、みんなの顔が見えて一つの食のサイクルを回しているというところは、意外と少ないかもしれません。

 

はじまりは、新型コロナウイルスで打撃を受けた人と不動産を活かしたいという吉備さんの想いからスタートしたプロジェクト。食をテーマにする際、原材料の調達が手近で可能になればメニューの開発もできるためフードロス削減にも繋がると、室内でも可能な水耕栽培に着手したといいます。

 

1階のカフェは3階の栽培者に発注計画を送るんですが、数か月先にイベントなどがある時は「これ今から種植えなきゃ間に合わないね」という会話がうまれます。そういうところがこの取り組みの面白いところですね。

 

ICONIC STAGEの商品

 

 


 

 

海外経験を活かしたメニューと空間づくり

そして、ICONIC STAGEのレシピ監修を手がけるのは、出張料理の第一人者であり海外経験も豊富なマカロン 由香さん。

 

 

パリの三ツ星レストラン「Ledoyen ルドワイヤン」「Arpège アルベージュ」などの名店で研鑽を積み、日本における出張料理をスタートさせた女性シェフとして活躍されています。

 

 

マカロン 由香さん

 マカロン 由香さん

 

 

そんなマカロンさんにレシピ監修の依頼をした意図を、吉備さんに伺いました。

 

世の中には料理研究家やレシピ開発者の方はたくさんいらっしゃいますが、レシピで終わりではなく、それをどういうお皿や空間で提供するかまでを考えてプロジェクトに参加してもらえる人であること。

 

そして絶対譲れない条件は、世界で活躍したことがある人でした。マカロンさんはフランスでご活躍されていることから、海外から日本を眺める視点を持っている、異文化での経験が豊富な方です。

 

私も海外に住んでいた経験があるのですが、日本の飲食店は美味しい料理を食べるだけの空間という印象が強いように思います。海外では食と芸術の融合があったり、流れる音楽や演奏を聴いたりと、食事を楽しむ空間づくりが当たり前にあります。

 

そういった日本と海外の両軸の視点で話ができ、レシピづくりやお店づくりを依頼できる方としては、やはりマカロンさんが最も適任でした。

 

ICONIC STAGEでは、マカロンさんの食に関する豊富な知識と経験をもとに、フレッシュな食材を味も色も香りも余すことなく活かされた、美しいスイーツや料理に仕立てています。

 

 

フレッシュな食材を活かしたメニュー

 

 フレッシュな食材を活かしたカフェメニュー

 

 


 

 

食べるにとどまらない、食を通した学び体験

また、食べるだけではなく、食を通した学びも発信しているICONIC STAGE

 

 

子ども向けのイベントとして、水耕栽培の見学やLEDについての学び、摘んだお花やハーブを用いたクラフトドリンク体験などを実施。今夏も多くの親子が参加しチケットは完売だったといいます。

このようなイベントが横浜での小さな旅のコンテンツになっているのは嬉しいことですね。単なる飲食という機能で終わらず、仕組みとして社会とどう絡めていけるかが、これから楽しみです。

食とサイエンスを絡めたコラボレーションはまだまだできることがあると思うので、そういう唯一無二の展開をしたいと思います。

 

水耕栽培を学ぶ子ども向けイベント

 水耕栽培を学ぶ子ども向けイベント

 

 

他にも、ウェディングを控えた新郎新婦による播種体験を経て収穫されたものから宴席メニューを考案するなど、食を通した「コト体験」を様々な角度から企画。

 

 

吉備さんの想いから生まれる「店産店消」を活かした食の可能性は、今後さらに広がりをみせてくれそうです。