nifu
人も自然も美しくする循環活動
自分の体を知る「温」のちから
2025.6.13
昔からよくいわれる「冷えは女性の大敵」。
血行不良や免疫力の低下、ホルモンバランスの乱れなど、冷えはあらゆる不調の原因とされ、身体を温めることは健康や美容の重要な基盤づくりとされています。
そんな「女性の身体を温めること」をミッションに掲げ、都内を中心とした10店舗を展開しているのが、ガスや電気を使わずに自然の発酵熱のみを利用した発酵温浴サロン「nifu(ニフ)」。
発酵温浴「nifu」
発酵温浴、酵素浴と呼ばれるものはあまたあるなかで、「nifu」の最大の特徴は、ヒノキパウダーの原料となる吉野ヒノキの伐採、加工からすべての工程を自社で行うという徹底した品質へのこだわり。
『nifuの種菌』を使用し発酵させたヒノキパウダー
自身も奈良県吉野に移住され、自然の循環や地域課題にも取り組まれている、代表の片山 裕介さんに、「本質的な美しさ、吉野の森からはじめる循環活動」についてお話を伺いました。
代表 片山 裕介 さん
情報に溢れる現代こそ、自分のからだに“本当に必要なもの”を
発酵温浴では、肌あたり気持ちいいヒノキのおがくずパウダーの中に浸かること、わずか15分。発酵熱により浴槽の中のパウダーの中心部分は70〜80℃になり、空気を含ませることで体感温度40℃前後と入浴に適した温度に。短時間でも身体の深部からしっかりと温まり、発汗でデトックス効果も抜群です。
何かを加えるより、余計なものを引いていく。
自分自身の温もりで、自らが癒えていく感覚こそが「nifu」の提供する温の巡りです。
今は様々な情報が溢れていますが、健康や美容はメディアやSNSで流れてくる情報に飛びついて鵜呑みにするのではなく、自分にとって価値あるものに気づける身体づくりをすることが大切だと思っています。
発酵温浴自体は身体を芯から温めて、血流が巡る、すごくシンプルなものです。だからこそ自分が本来もっている感覚を呼び覚ましてほしいですね。
現代では様々な情報が溢れ、つい新しい情報や商品に目がいきがちですが、本当に身体が喜ぶことは実はとてもシンプルなことだといいます。
血流が巡り、発汗作用も抜群の温浴
頭皮ガチガチな日本人に、土台を整える本質的なケアを。
そんな30年以上美容業界に携わる片山さんのターニングポイントは、海外で影響を受けたという、古来よりその土地に伝わる自然療法にありました。
もともと美容師をしており2000年にオーストラリアに渡り、アメリカ人が経営しているデイスパといわれる、日常的に通っていただくトータルビューティーのスパサロンで働いていました。そこのサロンではオーストラリアの先住民のアボリジニの知恵をスパメニューに落とし込んでいて、日常的に自然療法に触れる機会があり、
僕自身も体調を崩したときにフラワーエッセンスなどに多々お世話になりました。日本に帰ってからも個人的に使用はしていましたが、オーストラリアの先住民の知恵は、オーストラリアでやるべきこと。日本でも日本古来の知恵を使ったサービスをできないかと考えるようになりました。
そしてオーストラリアから帰国後、日本のサロンでの気づきが「土台を整える」温浴サービスに繋がったといいます。
東京のヘアサロンに戻り日本とオーストラリアを比較したときに、日本のお客様は頭皮の硬さからも緊張感があり、ストレスを抱えていることがわかりました。美容室に来るときもとても綺麗な身なりで来てくださり、どこか力んでいる感覚が強かったんです。オーストラリアの人はラフな格好で実に自然体、意識しているというよりそれが当たり前なんです。
カラーやトリートメントで一時的に綺麗にすることも大切な技術ではありますが、お客様の硬くなった頭皮に触れ、髪質や頭皮など根本的な土台を整えることがとても重要だと思い、遠回りなようですが心身の巡りをよくする、深部を温めるというところに辿りつきました。
全て自社でやる。直面した地域課題と素材へのこだわり
そんな「土台を整える」ことを目的とした発酵温浴で、重要なのは温浴サービスの要となるヒノキのおがくずパウダー。しかし「自分たちの求める品質のものは手に入らない」という現状に頭を抱えたといいます。
全国のおがくず酵素風呂の7~8割は奈良県吉野の素材を使用していると思います。専門の業者さんがいたり、「木の街 吉野」といわれるだけあって製材するボリューム大きい地帯です。実際に僕も2012年頃におがくずの仕入れにはじめて吉野の山を訪れました。
ですが、おがくずが欲しくて製材所に行っても、おがくずはあくまで木を切ったときに 出る木屑なので、当然ゴミが混ざっていたり管理されていない環境でした。それをお客様の肌に触れてもいい品質までにするには、地元の製材所もどんどん減っているなかでは、自分たちでゴミを取り除くなどのひと手間加えるしかありませんでした。
「自分たちでやる」と決めたものの、木を切ることはできても、木を運び加工するという知識も経験もなく、ましてや設備や機材もない。「割に合わない」と付き合ってくれる人もいなかったので、自分でリスクをとって少しずつ手探りでやるしかなかったですね。
吉野の山に入り、伐採や運送などに取り組みnifuのメンバー
しかし、そんな活動のなかで森林問題に直面。吉野をはじめ使用されない放置林が増え、山には伐採されたスギやヒノキが多く残され放置されている現状だといいます。
放置林は誰も手入れをしていないので、一歩も中に入れないほど木の枝が絡み合っていて、その中を1本1本伐採して道を作っています。そういった放置林が吉野に限らず日本各地に増えていて、そうすると土が痩せ細り、そのうち山ごと流れていってしまう可能性があります。
間伐後の山には、市場では売れない枝と葉っぱの部分が基本的に山に捨てられ、誰も手をつけません。誰かがやるしかない状況なので、小さな製材所を構えて山に入り、伐採から加工まで全て自分たちで行い、nifuでは捨てられてしまう枝部分もおがくずにしています。
おがくずは加工の段階でどうしても混入してしまうという工業油や鉄粉などを、目視やマグネットで丁寧に取り除き上質なヒノキパウダーへ。他では使用されない枝葉や幹肌も粉砕することで、自然界の微生物が700種以上も存在し、葉には乳酸菌も含まれているといいます。
市場に売れないスギやヒノキの枝部分などが捨てられる放置林
ヒノキの伐採から加工まで、全て自社で行う徹底した品質管理
「利益優先のことはしない」活動を伝えるプロダクトへの想い
そして「nifu」では、吉野ヒノキをはじめ地域課題の原料を利用した、入浴剤やアロマミストなどのオリジナルのプロダクトも生みだしています。ヒノキの天然精油などナチュラルな成分でつくられた、片山さんの想いが詰まったものばかりです。
お客様に自分たちのストーリーを届けるためのツールとして、プロダクト開発を行っていますが、利益を優先させた商品開発はしません。小さなブランドをやっていると、あれもこれも作りたいという「作り手のエゴ」が前に出てきてしまいやすいですが、本当に自分たちがやる意味を見失わないようにしていきたいです。
今は低価格でも高品質なものが大量にあるなかで、我々は何をつくるべきか?と考えると「nifu」で行っている活動の同一線上にある地域の社会課題を解決するような原料を使用すること。例えば使い道のなかった酒粕を使用したプロダクトや、甘酒づくりも耕作放棄地を一から耕し、酒蔵の方と田植えから取り組んでいます。そういった他社にはない自分たちのストーリーが出せているかを大事にしています。
酒米の田植え~収穫、製造まで想いの詰まった甘酒
女性の美容をサポートし、地域の課題解決へ
今では吉野に限らず、様々な方面で地域課題の相談を受けているという片山さん。
都会の女性の美容をサポートすることで、地方の課題解決につながるような新たなアウトプットを今後もしていきたいです。
「nifu」では林地残材を回収し、豊かな循環活動を行っています
コロナ禍では1日も休まずサロンの営業を続けることで、医療従事者のお客様に「ここがあるから頑張れる」と大変喜ばれたといい、ラグジュアリーサロンではなく、「nifu」が目指すのは女性たちの日常に寄り添うような「町のお風呂屋さん」だと語ってくれました。
吉野の森から巡る、美容と健康の循環。
今後も日本各地の地域課題を、豊かなかたちに生まれ変わらせ、私たちに気づきと癒しを与えてくれることでしょう。
女性の日常に寄り添い、多くの支持を受ける発酵温浴サロン