中むら

のれんの可能性を拡げる
若きプロデューサー

 2022.9.27

 

 

「とらや」ののれんが好きだ。

 

 

ジャパニーズ・トラディショナルど真ん中ながら、モダンさも感じる。くぐって出入りするお客さんの所作もよい。

 

 

ペラペラで短い「のれんぽいもの」では、この雰囲気は出せません。

 

 

そのとらやの、六本木にある店舗ののれんを制作した「中むら」の中村 新さんにお話を伺いました。

 

 

「中むら」CEO 中村 新さん

 

 

「中むら」の代表に中村さんが就いたのは今から8年前。中むらは大正期に京都から上京した、中村さんの曽祖父が創業した悉皆屋(しっかいや)が祖業です。悉皆屋とは、着物や布地の分業制の工程を取り仕切る職人のコーデイネーター。中村さんは屋号を継いだのちに事業領域をのれんに定めます。

 

 

ーーーなぜのれんを商いにしようと思ったのでしょうか。

 

 

それまではエネルギーを扱う商社に勤めていた中村さん。ある時偶然にのれんを製作する機会があり、その際に市場を見たところ大きな可能性を感じたとのこと。

 

 

とはいえ中村さんがのれん制作の職人になる、ということではなく、プロデューサーとして顧客の要望に合わせてのれんの生地やサイズ、掛け方などの仕様や染色の具合を決め(デザインもするそうです)、のれんをトータルで設計・製作するのがお仕事。

 

 

現在の空間や価値感に合う使い方、楽しみ方を提案することこそ、のれんの魅力を知ってもらい、ニーズを増やすことだと中村さんは考えています。

 

 

だから、その一環で神田淡路町にショールームをつくりました。現代美術館のホワイトキューブのように、装飾を排した空間にのれんがかかり、微かな風を受けて揺らいでいるさまを見ると、「家のあの場所にこののれんを掛けたらどうなるだろう・・」と思わず想像が膨らみます。


 

「中むら」ショールーム

 

機能ではなく、情緒に訴えかけたい

 

という中村さん。

 

 

中村さんに依頼するクライアントは品質やデザインに特にこだわる方が多いため、大変な仕事が多いけれど終われば貴重な経験になる、とのこと。以前に製作したシンガポール・チャンギ空港にかかる6m20cmののれんは、おそらく世界最長だろうと話します。

 

 

伝統的な柄もいいけれど、アートが好きな方、現代的なリビングで生活している方に受け入れられるようなのれんをつくりたい。そう思った中村さんは、さまざまな領域で活躍するアーティスト、デザイナーとコラボしたのれんをこの秋、発表しました。

 

 

これまではB to B中心だった本格的なのれんを、個人が屋内空間で楽しめるように。


 

空間を仕切るほか、タペストリーのように飾っても良い

 

 

のれんを扱っていてよかったのは、「売った後にそののれんを見られること。売った後もお客さんとの接点がある。それは自分にとっても、職人にとっても良い」という中村さん。

 

 

伝統的なプロダクトを軽やかに変革するその活動には、これからも目が離せません。