中川木工芸比良工房

言語化されない思想や哲学を
手を動かし木桶の技で具現する

2021.11.17

 

中川木工芸比良工房が制作した木桶、「YORISIRO」/「WAVE」。どちらも木板が合わさっていることを俄かには理解できない、自然な曲線が目を惹きます。水を湛える機能をもちつつ、一般的な「桶」のイメージを凌駕する姿から感じる、言語化できない感覚を解くカギを得ようと、制作者である中川 周士さんに話を聞きました。

 

 

以前は、1年に2ヶ月間は海外に行き、展示会や打ち合わせをしていましたが、昨年からコロナの影響で日々工房にいます。

 

YORISIROもWAVEも、ここ数年取り組んでいたものをグランプリ※に応募したのですが、年中工房にいて考える時間も取れたので、ちゃんと出せていなかったものをまとめる意味合いでコンセプトを作りました

  ※両作品は「第1回 日本和文化グランプリ」に出品され、最優秀賞を獲得しました。

 

 

応募作であるYORISIROWAVEに限らず、はじめにカチッとしたコンセプトを立ててそれを具体化するのではなく、手を動かして未だ言語化されていない思想や哲学を具現するのが中川さんのものづくり。なので、私たちが知るコンセプトは、作品が完成した時点で自ずと出現すると言います。

 

 

中川木工芸比良工房 中川 周士さん

 

 

今回の2作品はそのものづくりの姿勢をベースに、素材へ対極的なアプローチをとることで生まれました。素材がもつ、コントロールできない部分から生まれたのがYORISIRO、逆に100%コントロールできる部分をまとめたのがWAVEです。

 

 

木桶の制作には、台が曲線(かまぼこ状)の鉋を使用

 

 

制作する木桶により、約300種の鉋を使い分ける

 

  

和文化とは、個人を超えた「伝承」

中川さんは、自身を「アーティストではなく職人」と称します。アーティストは一代限りでオリジナリティをもって表現することがキモだが、職人は個人を超えた「伝承」を大切にする。伝統工芸の職人も、どうしても今のランナーにスポットライトが当たるが、先代、先々代から渡されたバトンがある。自分のアイデンティティを超えた「伝承」こそ、和文化の本質、と語ります。

 

 

新型コロナウイルスの影響が広がる前は海外に頻繁に赴いていた中川さんは、日本と海外を俯瞰して

 

 

海外のアート市場でもクラフトは注目されています。

 

個人のクリエイティビティがポイントとなるアートに対し、クラフトは「継承」「匿名性」が大事です。

 

さらに視野を広げると、世の中も特定のエリートが物事を動かすのではなく、個人を重要視しながらも集合的な知で課題を解決してゆく、「IからWeへの転換」を感じています

 

 

と話します。

 

 

集合的な知を形成するのは、多様性です。「自分の中にも多様性が存在していて、矛盾をもった自分でもそのままで良い」という中川さん。YORISIROWAVEから受けた、言語化できない感覚は、移りゆく社会のイメージかもしれません。

 

 

YORISIRO

 

 

 

WAVE