中村 元風

「やきものはサイエンス」
独自の釉薬で心をポジティブに

その立体的で艶やかな光沢を、私は少なくとも「やきもの」では見たことがありません。

 

 

中村元風さんは綿々と受け継がれてきた九谷焼の伝統を踏まえつつも、現代美術家として、今の技術を融合することにより、見る者の心にポジティブな揺らぎをもたらす作品を生み出しています。

 

 

アーツ&サイエンス

自然豊かな石川県の漁村で育った中村さんは、幼い頃から生命に興味を持つようになりました。大学では生物学、そして大学院では生態学の研究に従事するものの、その中で生命をモノとして扱うアプローチに疑念を抱くように。

 

 

そして、自らが見た姿を形にする芸術にこそ自分が探す生命の姿があると感じ、制作の道に入ります。定量的な科学的メソッドと創造性のどちらにも偏らない、中村さんが体得した動的なバランシングはその後の作品制作を貫いています。

 

 

 

希求し続けていた赤、未来を切り開く赤

「やきものはサイエンス」という中村さんは、作品に使用する素材開発にとても力を入れています。

 

 

自身のイメージを作品に具現化できる素材が売られていないことから、独自で釉薬の研究開発を進めており、その精度は色の調合で10万分の1グラム(0.00001グラム)単位、焼成温度も1度単位で調整と徹底。

 

 

 

 

色絵磁器は、白磁に色ガラスを焼き付けてつくられます。白磁に用いられる色遣いは「五彩(黄・緑・紺青・紫・赤)」といわれ、中でも赤だけはガラス質で厚みを表現できる色素材が存在しませんでした。

 

 

そのような状況において、中村さんは25年以上の研究を経て世界で初めてとなる深い赤色で絶妙な盛り上がりを実現する釉薬を創り出します。その色がこの世に生まれたのは、折しも2011311日、東日本大震災が発生した日の朝。この赤が希望の赤になれば、と「希赤(きせき)」と命名されました。

 

度重なる試行錯誤から生まれた色の透明性と輝きを備えた作品を、是非ご堪能ください。 

 

 

 

【プロフィール】中村 元風(なかむら がんぷう)

1955年 石川県に生まれる。

1981年 金沢大学大学院理学研究科生物学専攻修了。

1995年 日本工芸会正会員に推挙。

2004年 景徳鎮国際陶磁博覧会に招待出品。以後連続出展。

2008年 Ambiente(ドイツ・フランクフルト)に出展。

2010年 景徳鎮(於 陶磁学苑)にて個展開催。上海美術館にて個展開催。Shanghai Art Fairに出展。

2011年 ガラス質の深紅釉「希赤」を完成。世界初。

2012年 日中韓ギャラリー芸術博覧会に日本代表として出展。

2014年 水の輝きを永遠化する釉「グレイズ」を発明。世界初。

2016年 現代美術家に転身。「グレイズ」ー輝きは、チャレンジから生まれる を開催(東京)。

2017年 SOEN Paris(フランス・パリ)にて展示。

2018年 中村元風「誕生」The Glaze 2018を開催(東京)。

2020年 新宿伊勢丹、大宮そごうにて中村元風展を開催。

その他、国内外にて多数個展開催。