剛腕
ぶっ飛んでるくらいが面白い
一言から生まれた類なき革製品
2021.2.17
エキゾチックレザー専門のレザーブランド
ぶっ飛んでる、バカバカしい、と言ってもらえるのが一番の誉め言葉です。
そう豪快に語ってくれたのは、色づかい豊かな独自の革製品を取り揃える剛腕の佐野直彦さん。
革製品と聞くと、牛革や羊革の鞄や財布などを思い浮かべる人が多いなか、剛腕にはそういった、いわゆる一般的なものは1つもありません。
剛腕で取り扱うのは、ガルーシャと呼ばれるエイ革や、クロコダイルなどの扱いが難しいとされるエキゾチックレザーのみ。そして革製品には珍しい、バリエーション豊富な色づかいと、他にはない遊び心あるデザインには思わず目を惹かれてしまいます。
当たり障りのないところで、ユーザーにはあえて寄り添わないようにしています。
マーケティング先行のブランドが多いご時世で、佐野さんの目指す理念は実に潔い。
根拠のない言葉を現実に
そんな剛腕誕生のきっかけは、思わず口にしたという一言から。
7年前のある日、時計の並行輸入業を営む佐野さんのもとに鳴った1本の電話。そのときお客さんとして問い合わせをしてきたのが、時計ベルトの革職人さんでした。
気になった佐野さんは後日直接工房を訪れ、驚愕したといいます。そこには、今までに見たことのない繊細な職人技から生まれる、色鮮やかクロコダイル製の時計ベルトが。
こんな技術があるのにもったいない。もっと世に出て知ってもらうべきですよ!
革製品に対するノウハウもなければ、なんの根拠もなかったといいますが、思わず初対面で口走ったという心の声。
しかし、そもそも日本には高級時計のベルトをカスタマイズする概念があまり定着していませんでした。「そういったものは海外向きではないか?」と、知人にアドバイスを受けた直後のこと。取引先がロサンゼルスに出店するという話が、タイミングよく舞い込みます。
そして、半信半疑で店頭に置かせてもらったというクロコダイル製の時計ベルトに、突然の大量注文が。その主は、なんと高級時計ブランドのアメリカ正規ディーラーのオーナーだったといいます。
とりあえず言っちゃう。あとはそれを実現するために考えるだけですから。
その後も、国内でのイベント出店や店舗での取り扱いなど、伝手もないなか発した言葉を、自らの行動力で実現させていった佐野さん。ゼロから希望の販路に広げるため、数年間も足を運び続け、ようやく認めてもらったこともあるといいます。
(写真左より)佐野 直彦さん、革職人 松下 隆さん
最も固い革でつくる、大人の遊び心
新たな商品群には、ガラスビーズを敷き詰めたような光沢から「海の宝石」とも呼ばれるガルーシャ(エイ革)を使用。どうせやるなら「今まで誰を見たことないものを」という想いから誕生した、ネクタイとボウタイは実に秀逸です。
はじめは予想だにしない企画に、長年の革職人さんからも制作を拒まれたといいます。革のなかでも最高の強度といわれるほど、固く加工が難しいガルーシャで、ネクタイの曲線を表現するのは無謀に近かったとのこと。試行錯誤を繰り返し完成したという渾身のガルーシャアイテムは、革製品の概念を変えてくれるほどのインパクトです。
とある飲食店の代表は、「やっちゃいましたね~。うわ~、ここまでやるのはすげーわ」そんな言葉を漏らしながら、ボウタイを購入していったとのこと。
それはまさに最高の誉め言葉だったといいます。
「ぶっ飛んでる」くらいが面白い。
今年もいままで以上にぶっ飛んだ企画があると、目を輝かせる佐野さん。自らの言葉を実現させた先には、想像もしていなかった新たな出会いが繋がり、剛腕のさらなる可能性を広げているといいます。
僕には何もないんですけど、唯一あるとすれば、
必要なときに、必要な人が、必要なものをもたらしてくれることなんです。
自身の言葉に実直であり続け、自らを人たらしと呼ぶ佐野さんらしい言葉。
そして、あえて広告やSNSは積極的にやらずに、「本当に良質な面白いものを作れば、それを求める人にはちゃんと出会えると信じています」といいます。
王道や無難という言葉の逆行をいく剛腕。その遊び心溢れる個性は、まさに類は友を呼んでいくのでしょう。
きっと、大人こそ少しぶっ飛んでるくらいが面白い。
そう思わせてくれる佐野さんの、次なる一手に期待が膨らみます。