大和川酒造店

安心安全はエネルギー作りから
清酒造りを持続可能なものに

By Emotion

2021.6.9

 

地の米、地の水、地の技術、そして、地のエネルギー

こんにちは!足元が濡れているのでお気をつけくださいね。

平均年齢が30代前半と、約230年の歴史のある酒蔵にしては意外に若い蔵人の快活な挨拶とにこやかな眼差し。蔵を訪れると何度も目にします。

 

 

彼らの目の奥に灯る明かり、その理由は大和川酒造店専務の佐藤 雅一さんにお話を伺う中で明らかになります。

 

 

江戸中期の1790年(寛政二年)創業の大和川(やまとがわ)酒造は、福島県喜多方の地で約230年、9代続く酒蔵です。

 

 

北西に万年雪を抱く飯豊山(いいでさん)を臨む喜多方。その豊かな伏流水を活用した、米、味噌、醤油、そして清酒づくりが盛んで「蔵の街」ともいわれています。

目指すのは、地の米、地の水、地の技術(人)、そして再生可能エネルギーを使った地のエネルギーでの酒造りです。

佐藤さんが語るその言葉には、酒蔵の歴史と進むべき道を見据えた、芯の強さを感じます。

 

 

佐藤雅一さん飯豊蔵の前で、左から杜氏の佐藤 晢野さん、専務の佐藤 雅一さん

 





地の米:自社で米を作り、精米する

地産地消を目標にかかげ、1から10まで自分たちの手で責任をもって商品を作りたいという想いから、2007年には農業法人を設立。喜多方市内で酒米を自分たちでつくりはじめます。

 

 

酒米の状態をみて、どのお酒に利用するかを柔軟に対応できるように、精米も自社で実施。

 

 

全自動醸造用精米機全自動醸造用精米機

 

大和川酒造では年間約1500石(270㎘)のお酒を醸造しており、現在ではその50%~60%のお酒を自社米で造れるようになったそう。実はこの規模で酒米作り、精米、酒造りをおこなう酒蔵は日本でもごく僅かです。

 

 




地の水:やわらかな飯豊山の雪解け水をふんだんに利用

お米を育てる水も、お酒の仕込み水も、軟水でミネラル成分が少ないため、なめらかで柔らかい、地元飯豊山の雪解け水を利用します。

 

喜多方といえば喜多方ラーメン、朝ラーメンも有名ですが、「喜多方ラーメンがおいしく、朝から食べても重たくないのは、お酒と同様に飯豊山の柔らかな水を利用しているため」と佐藤さんは言います。

 

 

押切川飯豊蔵の横を流れる飯豊山地を水源とする押切川

 





地の技(人):蔵人が生き生きとはたらける持続可能な環境

お酒造りといえば、深夜作業や泊まり込みでの作業という話もききますが、今の時代、それを好む人はあまりいないのではないでしょうか。

機械に任せた方がよいことはそうしています。例えば、温度管理。昔は人がやっていたので深夜作業、泊まり込みと大変でしたが、機械に任せることで、より適切な温度でお酒を造ることが出来る様になりました。

 

その結果、蔵人も今の時代に合った働き方が出来るため、朝から生き生きと働いてくれています。

と佐藤さんはいいます。実際、佐藤さんの弟で杜氏の佐藤 晢野さんは36歳と若く、叔父にあたる社長の佐藤 和典さんから7年前に杜氏としての役割を引き継ぎました。

 

 

日々の深夜作業に疲れ切ることはなく、なにより清酒が好きで、よりおいしいお酒、新しいお酒を模索できる環境が、蔵人の眼に明かりを灯していたのです。

 

 

蒸したお米をベルトコンベアへ蒸したお米をベルトコンベアへ。酒造りで一番の重労働です。

 

若い杜氏が旨い酒を造れるワケ

ところで、そんなに若い杜氏で大丈夫なの?と思われるかもしれませんが、それが福島県の凄いところです。

 

 

約30年前から清酒アカデミーを運営し、酒造りの後継者を育成している福島県。酒蔵個々の財産で門外不出だった酒造りのノウハウを持ち寄り、県内の杜氏や研究者から醸造用酵母に関する知識や酒造機械の保守点検、酒造の歴史などを3年間教えています。

 

 

アカデミーでの同期や先輩後輩が切磋琢磨し、酒質をあげ、新たなお酒に想いを馳せる、そんな好循環が生まれています。

 

 

その結果、福島県では30代の若い杜氏は様々な蔵で生まれており、福島県は日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会での金賞受賞数が8回連続日本一(最終審査が中止となった19酒造年度を除く)と記録を更新するほど、美味しい日本酒を造る若い力が育っているのです。

 

 




地のエネルギー:作り手のみえる安心・安全なエネルギーを

東京電力福島原子力発電所の事故が起きた時、ハッと気づきました。お米、水、人は作り手が見えて安心安全なものを提供できるようになってきたが、電力はどこから買っていたのかと。安心・安全という言葉を鵜呑みにし、人任せにしていたことを。

と現会長で9代目佐藤 彌右衛門さんは言います。

 

 

以降、再生可能エネルギーを使った酒造り、そして自分たちで発電した電力での酒造りを目指す取り組みが始まりました。

 

 

蔵の屋根での太陽光発電からはじめ、まだまだ実現には至っていませんが、重油よりクリーンなエネルギーでのボイラーを稼働できないか、自然エネルギーでどのように安定した電力を作り出すか、など日々検討をしています。

 

 

太陽光パネル飯豊蔵の屋根の太陽光発電パネル

 

幸い倒壊など直接の影響はなく、放射線の影響も検査の結果問題かったものの、福島のお酒というだけで風評被害に苦しんだこの10年、昔からのファンなど人や地域との繋がりの大切さを改めて感じたと言います。

 

 

安心・安全の考えをエネルギーにまで広げた清酒。持続可能な酒造りの姿が大和川酒造からはじまります。