PFE TAKASHI DEGUCHI

あるがままの個性を宝に
スタイルを格上げする真珠

By Emotion

2020/11/17

 

自然には丸くて白いものばかりではない

ジュエリーのつくり手はPFE TAKASHI DEGUCHIの出口 崇さん。

 

 

真珠養殖発祥の地である伊勢志摩で生まれ育った出口さんは、大学卒業後、知人を介してタヒチで真珠養殖をしている日本法人に入社することとなる。

 

 

父親は公務員で真珠関連業ではなかったが、地場産業を支えよう、発展させようという想いで仕事をする背中を見て成長した出口さん。

 

 

そのためハッキリと意識する前に、自分なりに地元のためになる仕事をしたいという想いが芽生えていたという。

 

 

会社では真珠の見方、選別の技術を一から学んだ。そして、希少で日本での取り扱いの少なかった黒真珠だけのオークションを1990年代に初めて開催するなどの経験を経て、入社から4年後に独立することになる。

 

 

独立後すぐの頃は、真珠を海外の競りで仕入れて国内に販売する卸業をしていたものの、白くて丸い真珠しか陽の目を見ていないことに違和感を覚えた。

 

 

実際に海を相手にし、自然に向かい合えば、丸くて白いものばかりではないとわかるのだ。

 

 

海

 

色んなものができる。形が違うものが。僕はその個性的なものに惹かれた。それを捨てちゃだめだろうって。個性を捨ててみんなが均一化することに疑問があり、個性こそが宝じゃないかと感じていた。

 

と出口さんは語る。

 

保守的な真珠産業を象徴するアイテムだった真珠のネックレスを、新たな切り口でファッションにしたいという思いから、バロックパール、ケシパールを用いたネックレスのデザイン、製造まで仕事の幅を広げていった。

 

 




自ら1粒1粒見て0.2%の真珠を選別

世界各国で開催される真珠の競り。まずこの競りに参加すること自体が限られた人にしかできない。購入量、信頼関係などをもとに個別に連絡が来るとのことで、これまで出口さんはタヒチ、インドネシア、オーストラリアなど、世界各地で行われる競りへ参加し真珠を輸入してきた。 

 

 

競りで手に入れた真珠は海の香りや汚れを落とされ、選別される。

 

 

自ら1粒1粒見て0.2%の真珠を選別

 

 

出口さんは真珠の照りや形を見て、一か所でも黒い点があったり、かろうじて見える程度でもキズがあると使わない。

 

 

たとえば先日選別した時は、25,000粒中たったの55粒が出口さんのジュエリー用に選ばれた。そして選んだ55粒の中に1粒だけ、ネジの様に線が入った真珠があった。

 

 

業界の常識では使用をためらうところだが、これこそが25,000粒中1粒の個性的な真珠なのだと感じ、ジュエリーに利用することに決めたそうである。

 

 

選別前の25,000粒選別前の25,000粒

 

 

選別された55粒。右のほうにネジの様に縞模様の真珠がある選別された55粒。右のほうにネジの様に縞模様の真珠がある

 

 

このようにして選別した一粒一粒の形が頭にあり、それらを活かすデザインを暇があれば考えているという。

 

 

暇があれば考えている

 

 

自ら世界に赴き、選別し、加工する。これだけの時間を真珠に捧げてきた人間だからこそできる、個性的なパールを贅沢に使ったジュエリーは唯一無二の存在である。

 

 

自ら世界に赴き、選別し、加工

  

 




「わが子を育てるような気持ち」で作られる海水パール

もう一つのこだわりが、淡水パールを扱わず、海水パールのみを扱うということ。淡水パールと海水パールの違いは主に2つあり、真珠の照りと希少性である。

 

 

淡水パールは一般的には海水パールより真珠層の透明度が低くそれが幾重にも重なるため、より透明度が落ちる。層の透明度がより高い海水パールは、外からの光を反射することで様々な干渉色が出て、奥から光が重なっていくような深みのある照りが生まれる。

 

 

続いて希少性について。

 

 

主に中国で産出される淡水パールは1つの貝から複数の真珠を養殖でき成長も早い傾向にあるため大量生産できるのに対し、海水パールは1つの貝から1つまたは数個の真珠しか養殖できない。

 

 

かつ、淡水パールは温度管理の簡単な池のような場所で育ち手間が少ないのに対し、海水パールは海で育てるため、毎朝水温を確認し、適切な水温の場所へ真珠貝のついたイカダを移動させるなど手間がかかるという。

 

 

このように、淡水パールと海水パールでは、出来ていくまでの過程、ストーリー、そして、作っている人の心や時間量が全然違うのである。

 

 

出口さんは業界を色々見てきた中で、とある海水パールの作り手が言っていた、 

 

貝は生き物、我が子を育てる気持ちで対話しながら作っている

 

という言葉が今でも心に残っている。1粒1粒に長い時間をかけ作り手の想いがこもり、希少性の高い海水パールこそ自分が扱うべき真珠だと思うに至ったそうである。

 

 




目の前のお客様を幸せに

202011月には伊勢神宮にほど近い場所にアトリエ兼ショップのBAROQUE ROOMをオープンした。築50年のビルの一室を借り、仲間の知恵に助けてもらいながら作りあげたという。

 

 

こちらでは出口さんの制作作業を見たり、好きなパールルースを未加工の物の中から選び、穴開け、接着、ネックレスを糸で組む作業などを体験をすることができる。新たな旅の目的地として皆様の心に残ればうれしい。

 

 

アトリエ兼ショップ

住所:三重県伊勢市八日市場町3-26 有文堂ビル2階

 

 

道を切り開きながら歩いてきたこれまでは、決して平坦な道ではなかった。そんな中でも出口さんが続けられたのは、そして、この道をこれからも歩き続けようと思う力の源はお客様の声とのこと。

 

 

目の届く範囲、足の運べる範囲で幸せを作っていく、そして目の前のお客様の、「良かったよ、好きだよ」の声が活力になると。

 

 

【購入者の声】

  • これまでファストファッションを着ませんでしたが、出口さんのジュエリーを購入した後は、ファストファッションを購入するようになりました。

    シンプルな服に出口さんのジュエリーを付けるだけで、もう全く別物にかわるので、ファストファッションも気にならなくなりました。
     
  • 向かいから歩いてくる人がバロックパール、ケシパールをふんだんに利用したデザインのジュエリーを身に着けていて、出口さんの作品だとすぐ分かりました。
     
  • 病気になり入院したとき、出口さんのジュエリーが、私が元気になって社会に戻るための希望でした。おかげさまで完治し、仕事時に身に着けています。出口さんのジュエリーを身に着けないと、私の一日が始まらないんです。

 

※その他、先日のコレクション展示では、大御所の著名女性ファッションデザイナーがフラッといらっしゃり、「あなたのジュエリー素敵よ。格好いいわ。続けなさい。」と声をかけてくださったことも力をくれたそうです。