NAOKO HATA CERAMICS

魅惑の釉薬の世界へ

自身を「釉薬マニア」だと語る、三重県鈴鹿市の陶芸家・畑 直子さん。

 


作品は伝統的な技法で作る一方、独自の釉薬で生み出される質感や色味が目を惹きます。作品シリーズでガラっと変わる表情も魅力。

 


釉薬と石膏の魅力にのめり込んでいる、という畑さんに制作について伺いました。


三重県鈴鹿市の工房で、白い素焼きの皿を手に取り検品する陶芸家・畑直子さん

畑 直子さん 






アート・ファッション好きの少女が飛び込んだ「焼き物の世界」

実家はすごい田舎の農家でしたが、幼い頃、アート好きだった母が週末連れ出してくれるのはいつも美術館でした。絵を描いたり、何かをつくったり、とにかく手を動かすのが昔から好きで、芸術大学に行こうと。ファッションやデザインもすごく好きでしたが、最終的に土が触りたいなと思い、愛知県立芸術大学の陶磁科に進みました。 


大学院を出てからは、自宅の隅にアルバイトで貯めたお金で窯を設け、万古焼で有名な四日市の焼き物工房でアシスタントを務める日々。

 


「自分には焼き物しかない」と、働きながら自身の作品づくりに取り組んだといいます。


私はこんなのがあったらかっこいい、使いやすいというデザイン視点の発想はあまりなくて。絵を描く感覚で「こんな世界を表現したい」という発想から生まれるものが多いんです。


芸大時代につくったという「Chain dish」もその一つ。森のなかで人間と動物が食事をする、そんなシーンをイメージしたといいます。



陶芸家・畑直子が手がける、縄目模様のリムが特徴の皿「Chain dish」を色違いで並べた写真

 チェーンのリムが特徴の「Chain dish」






数ミリグラム単位の調合で変わる、正解のない釉薬の魅力

そんな畑さんの作品で最も印象的なのは、やはり釉薬によって異なる変幻自在の質感やカラーリング。


釉薬は数ミリグラム単位の調合を変えるだけで焼き上がりの表現が変わるんです。そして、窯を開けるまで見えないので、どんな表情になるか分からない。だからこそ自分が出したい色や質感を日々テストピースで研究しています。


そのほとんどがボツになりますが、自分の思い通りのものができたときは、ずっと振り向いてくれない男性が振り向いてくれた。そんな感覚で嬉しくなります(笑)


陶芸の釉薬テストピースが並ぶ様子。色や質感の違いを確認するための試作カラーサンプル

 釉薬のテストピース



正解がない釉薬の魅力に学生時代からのめり込み、独自の調合に日々余念がないという畑さん。


陶芸家にとって釉薬の調合は、料理人でいう自分のレシピを探す作業。釉薬の研究はいまでもライフワークの一部です。

陶芸家・畑直子さんが、机に並んだ釉薬テストピースを一つずつ手に取り選別している様子

 今まで1000種類を越えるテストピースを制作






「どんな地味な制作工程も、自分を楽しませる」

そして、釉薬と合わせて畑さんが夢中になったというのが石膏。

焼き物の型を取るための石膏原型と石膏型は、一般的に他社に依頼することが多いと言いますが、石膏型づくりにも美意識が宿ると語ります。


芸大時代に韓国人留学生の子がいたんですが、その子がつくる石膏型が本当に綺麗で。みんなある程度は整えて作っていましたが、乾燥機に入れる時にその子の石膏型だけ細部まで美しく衝撃でした。私もあんな風につくりたいと、その子から石膏のつくり方を教わり始めたのが、石膏に興味を持ったきっかけです。


地元の工房にも手作業で美しい石膏型を作る職人さんがいたんですが、機械を使わず仕上げられる手仕事に魅了されました。


陶芸工房の棚に並ぶ、手作業で仕上げられた石膏型と素焼きの器の数々

制作された石膏型



作品の形を決める石膏づくりは、言葉では説明できない微妙なフォルム調整の繰り返し。


石膏の原型は何回も削り直します。少し慣れてきた今でも新作の原型は4回削り直しています。

どこをどう変えたらよりよい型になるかを探る時間も多いです。どこかフォルムが違うなと感じたら、削ってまた流しての繰り返し。ときには工房の入り口やキッチンなど目に付くところに飾り、客観的に眺めて違和感を探るようにしています。


そんな一見地味な工程であっても、つくること全てを楽しむ。

自分で自分に飽きないよう意識しているという畑さん。


理想の型に仕上がったときはやっぱり嬉しいし、だから楽しい。石膏づくりを含めてどの工程でも自分を楽しませるように取り組んでいます。


石膏ろくろで皿の原型となる石膏を削り出す、陶芸の型づくりの様子

 石膏ろくろでお皿の原型を制作






傍に置きたいものをつくり続ける

食卓や日常を明るく彩る、畑さんならではの感性で生み出される作品たち。


本当にシンプルですが、傍に置きたい、使ってて楽しい。と思ってもらえるようなものを作っていきたいです。「朝のコーヒーが美味しくて今日も頑張れるな」とかそんな日常の些細なシーンに寄り添えるものであってほしいです。


毎日当たり前にくる食事の時間が、いつもより少し楽しく、愛しくなる。

畑さんの作品は、そんな器のもつ見えないエネルギーを感じさせてくれます。



NAOKO HATA CERAMICSのマグカップと皿でコーヒーとお菓子を楽しむテーブルコーディネート

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