日本和文化グランプリ 学生賞/Excellent Student Award

「KOZAI」
野村 涼平

 By Emotion


京都では過去10年間で市内の12%(年平均800件)の町屋建築が除却され、毎日8-10t2019年)の廃材が生じ、そしてその多くは焼却されています。これは、国内外の観光客が増えた際に「古いものを捨てて、新しいものを取り入れる」方針を採った京都の個別性に因るところもありますが、資本主義をはじめとする近代の社会システムが生み出した状況と捉えると、他の都市にも敷衍できる構造がありそうです。

 

 

京都で生まれ、町の変遷を感じながら育った野村 涼平さんは、その古いものが解体され、新しいものに移り変わる現場を日々目にしていました。

 

 

これまでの生活スタイルを踏襲しても豊かになれないことは、多くの人が気づいていると思います。

 

ものづくりには責任が伴い、デザイナーとしてものをつくる前に「何をもって良しとするか」の価値観を明確に持つ必要があると感じています。

 

使われなくなったものを不要物として捨て、新たなものを作ることを「これまでの生活スタイル」とすると、ゼロウェイスト、経済合理性ありきではない仕組みがこれからの社会には必要ではないか。

 

そんな仮説のもと、「都市が変遷していく中で失われていくものを都市に還元する取り組み」としてKOZAIのプロジェクトをはじめました。

 

 

町屋の古材をフォトフレームにアップサイクルする「KOZAI」は、そう立てられた仮説を具体的なプロダクトをもって検証する目的でスタートします。

 

 

日々解体される町屋建築

 

 

野村涼平さん

 

建築、プロダクトデザインを学び、京都工芸繊維大学大学院を今年の3月に卒業したばかりの野村 涼平さんは、デザイナーとして企業に所属するほか個人でもデザインプロジェクトを展開。また、世界経済フォーラムの若手イニシアチブである「GLOBAL SHAPERS」のメンバーでもあり、自らが描く社会ビジョンをブレイクダウンし、様々なコンセプト/プロダクトデザインを手がける活動をしています。KOZAIではメタな部分、コンセプトやプロダクトディレクションを担当しました。


 

野村 涼平さん

 

 

ものや

 

「ものや」は2019 年に、プロダクトデザインを専攻していた大学4回生の櫻井 仁紀さん、吉田 卓史さんによって設立された、京都を拠点に活動するデザインユニット兼古道具屋。

 

 

現在は京都市北区に実店舗を構え、市場で買い集めた古道具や価値を見出された蒐集物、制作途中で生まれたモノなど様々な物を取り扱っています。またそれらの蒐集物を新しい発想の種とし、空間構成や什器 / 家具プロダクトなどの設計業務を行うスタジオを同時に運営しています。KOZAIではミクロな部分、プロダクトデザインや制作を担当しました。

 

 

櫻井 仁紀さん

 

 

「アウトプットするにはインプットが大事で、古道具屋をやっていると自ずとインプットが多くなる」と櫻井さんは言います。KOZAIの「元」となった古材は、築90年の家屋をリノベーションして、ものやの実店舗を作る時に出たもの。KOZAIの特徴は光沢ある質感とワイヤーで演出される、宙に浮いているような表現ですが、古材をフォトフレームに転換する過程で工夫したことを聞きました。

 

 

今回の木材は針葉樹で、どういうアプローチが適当か加工法を研究した結果、伝統的な「焼き杉」の技法を取り入れました。

 

そして、焼いた古材をディスクグラインダーで磨くと炭化された箇所が木材に擦りつけられることで光沢が生まれています。

 

木枠フレームとその内側の写真を格納するプレートが
ワイヤーで繋がれ、写真が浮いているように見える

 

 

KOZAIフォトフレームの原材料は古材であり、廃材ではありません。古材は、本来は材木屋さんで備蓄されているもの。調達方法を聞くと、家屋の解体の際にものやに声をかけてくれるとのこと。

 

櫻井さんは、そういった現場に立ち会うと木材だけでない遺留物を見て「本当にモノが多いな」と感じるといいます。このように単純なお金のやり取りではなく、ネットワークで素材調達をすることにも、これからの社会の姿を感じさせます。

 

 

解体された町屋から生まれる古材

 

 

世界的な写真イベント「KYOTOGRAPHIE」の
サテライトKG+にて、KOZAIを用いて展示された作品

 

 

KOZAIの今後

KOZAIは野村さんとものやが立てたコンセプト=仮説の具現化のひとつであり、今後は店舗や住空間などを同じ文脈で手掛けたい、と野村さんは言います。KOZAIでは「家」を木材というマテリアルへ分解し、フォトフレームに再構築しましたが、空間はどのように分解され、再構築されるのでしょうか。野村さんはインタビューの最後にこう話してくれました。

 

 

「ものをつくる」ことには、他者、次の世代への責任が問われます。

そのものをつくることでどのような変化が起きるのか。

その展望を明確に持ちたい。

 

これからも社会の持続可能化を体系的に考え、実行し続けます。



 

受賞作品

作品名:「KOZAI」

寸法:各種

素材:木材(解体家屋から採取された古材)

 

 

日本和文化グランプリトップページへ戻る