TOOT生みの親 大石卓さんインタビュー(後編)

男性の下着感覚を一新した
アーティストが生んだパンツ屋

2021.5.7

 

2000年のブランド誕生時から伊勢丹新宿店に商品が並び、発売年の年末には、バイヤーの予想を遥かに超える売り上げを叶えたTOOT。アーティストが初めて作ったパンツが一躍したのはなぜか。

 

 

最初の雛形を作る段階から、大石さんはパンツの高級メゾンを目指すというコンセプトを抱いていた。

 

デザインを真似されても高度な縫製技術は真似できない高級アパレルメゾンのように、縫製にはこだわりを尽くしました。例えば他社のパンツは、裏返すと縫いしろの始末が粗雑で“まさに裏返し”な見た目ですが、TOOTは裏返しても表面とほぼ同じ。

 

これは最初から考えていたのではなく、自分が納得できるまで修正を重ね調整した結果です。完成したら、偶然にも裏も綺麗な仕上がりになっていたんです。

 

そう語る通り、TOOTは裏返しても表面と見紛うほど美しい。パンツの、しかもその裏面だというのに、縫製にカン止めも使われている。

 

 

 

初めから海外市場も視野に入れていたので、フロントカップのデザインにもこだわった。

 

その国に割礼の文化があるかどうかで、パンツの中の男性器の収め方も変わるのに、下着専門メーカーのパンツでもフロントカップに工夫がありません。TOOTの縫製は、フロントカップの曲線のトップをどこに位置するか、また、フロントカップの中でも微細に異なるテンションやホールド感にも配慮しています。

 

足口のゴムがすぐ緩くならない仕立てには、色々な素材を買い集めて試作を繰り返したという。

 

 

一方で、ヒップの履き心地も大切だと大石さんは言う。

 

浅いデザインであっても、ヒップのホールド感はフロントカップと同じくらい重要だと思います。パンツはウエストサイズで選ぶ人がほとんどですが、ヒップの収まり具合も履き心地を左右すると思うんです。

 

そのため、ヒップ部分の裁断や縫製にも独自の工夫が込められている。発売以来、TOOTのコピー商品は後を絶たないが、細部にわたる綿密な構造は、他社がTOOTのパンツを分解したところで完全にコピーできないという。

 

 

絵を描くようにビジネスを考える

経済を学んだ経験がなく、本から学ぶのも苦手だったと言う大石さんは、TOOTの販促スキームを、絵を描くように考えた。

 

モチーフはパンツ。光の当て方でモチーフの明度や彩度が決まるように、どこに売るか、どう展開していくかで商品力が決まる。構図は目標額…というように。私は経験値から学ぶタイプなので、この方法でしか考えられなかったんです。

 

 

実売する売り場は、良品を知るお客様の多い伊勢丹新宿店だけと決めていた。2000年当時といえば、大手ECサイトも普及し始めた頃だ。

 

日本は、下着を代理購入…つまり“パンツなんてなんでもいい”と妻や母親に任せる男性が多いんです。でもパンツはプライベートなものですから、やはり自分で選ぶべきと思うんです。

 

自分で選んだものに納得すれば次回からはECでも購入してくれるだろうと、ECサイトの立ち上げも早かった。

 

 

顧客を楽しませる試練とセール品からの学び

TOOT は量産品より高額でも、長く使用できるコストパフォーマンスの高さも魅力だ。そして毎週新デザインが登場する商品展開の早さは、アパレル業界でも異例。これは創業時からのスタイルで、限定数が完売しても復刻しないため、コレクターが生まれる所以でもある。

 

発売当時、無名のブランドとして、常にお客様を楽しませなければいけないと思っていました。毎週新デザインを考えるのは試練ですが、デザイナーが変わった今もそれは続いています。

 

初代デザインは無地だが、これは当時のニーズに合わせて。その後、無地や単調柄ばかりのパンツ売り場を見て、ヒップにワンポイントを入れたデザインを出したら即完売したという。今ではデザイン・素材違いが多彩に揃い、評判を聞いて最初からEC購入する海外の新規顧客も増えている。

 

 

アパレルなのでトレンドは気にするが、トレンドを考えて商品を作るわけではない。

 

それよりも、シーズンを終えセール品になったファッション全般をチェックします。セール品だって元々トレンドとして売られていたものですから、売れ残った理由、お客様からNOを突きつけられた原因をそこから紐解きます。マーケティングで売れ筋を予測してものを作るより、失敗点から学ぶことが大切です。

 

デニムに似合うパンツを基本としながら、ひと昔前に流行った、腰履きデニムの“パンツチラ見せ”は論外だと大石さん。

 

 

あのセンスはTOOTを選んでくださるお客様の感覚ではないのではないかと私は思っています。私自身、腰履きデニムから覗くパンツが美しいとは思えないし、女性の下着と同じように、パンツの“セクシー”には、品の良さが必須ですから。

 

 

伊勢丹社内報『i press』では、各企画のイラストも手掛けた

 

 

消耗品であっても最高を目指す

 

伊勢丹社内報に8年間携わっていた間、お客様に対する姿勢を多く学んだと大石さんは繰り返し語る。

 

企画ページのイラストを描きながら、販促に関するスローガンや標語をよく見ていました。その中でも今も最初に思い出すのは、クレームはお客様からのアドバイスという言葉です。クレームに即対応することでお客様の信頼を損ねないことが、結果的に売り上げにつながる。これはTOOTの販促で常に気をつけています。

 

クレーム対応で数万円の配送代をかけて1枚のパンツを送ったこともあると苦笑する大石さんに、ところで「パンツの高級メゾンは実現したのですか?」と伺うと、日本のパンツ業界に一石を投じることはできたのではないかと答えてくれた。

 

パンツはアパレルの中でも一番に使い捨てられるアイテムなのかもしれませんが、TOOTのこだわりは、消耗品にも美学を持つヨーロピアンの思考に倣っています。

 

日本ならではの職人技術で、手間を惜しまず作られた純国産のパンツは他にないと自負しています。これは妥協なく作り上げた結果であり、それが多くの人に受け入れていただけたことが何より嬉しいですね。

 

Interview <大石 卓 / Taku OISHI>

男性下着を一新したアーティスト   前編 

 

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