日本和文化グランプリ 準グランプリ/Semi-Grand Prix

書のキュビズム「自然体」
紫舟

 By Emotion


1300年続く日本の伝統文化である「書」を、絵、彫刻、メディアアートへと昇華させ、文字に内包される感情や理を引き出している紫舟さん。

 

 

 

受賞作品「書のキュビズム『自然体』」は、アクリル板で四方を囲われた中に浮かび360度全方位から鑑賞できる、鉄で立体化された書。

 

 

 

制作や活動を通し、一貫して日本の思想や文化を世界に発信している紫舟さんの「書が、日本語や日本文化の一部としてではなく、ひとつの芸術作品として世界に認められるように」という志から生み出された作品です。

 

 

 

漢字や仮名を解しない海外の鑑賞者に書の本質を感じてもらうためには、書は紙から自由になる必要がありました。なぜならば、文字は紙が生まれるよりずっと前から存在していたから。

 

 

 

その遥か昔の文字は、動物の骨に彫り込まれた甲骨文字や、石に刻まれた金石文です。その三次元の表現にインスピレーションを受け、書を立体的に表現した「書のキュビズム」は生まれました。

 

 

書を紙という平面の軛から三次元の空間に解放することで、象られた文字を解しない人にも内包している概念を伝えてくれる、ユニバーサルな表現。作品を眺めれば、たとえ「自然体」の字義が分からずとも、強張る気持ちを緩めてくれるでしょう。

 

 

 

作品情報

 

書のキュビズム「自然体」

鉄、和紙、アクリル

 

 

「書のキュビズム」は、紙にかかれた書が言語の壁や国境を越えていく表現となることを願い、誕生した。

 

書の文化を知らない国の人々は、墨の線だけで書かれた作品を目の前にして、こう感じている。

 

 

 

輪郭をかいて中を黒く塗るのと何がちがうの?

 

墨をこぼした跡?

 

一筆でなぜ書かなければならないの?

 

絵は何度も上からなぞりひとつの表現をうみだすのに、なぜ?

 

書はわからない、と。

 

 

 

それは、書が、紙に固定されていることに由来する。

 

書家は、常に書が平面ではないことを知っている。

 

筆先が紙面を泳ぐときに、紙の深さを感じとっている。

 

書のキュビズムでは、筆圧の強い箇所ほど彫刻が奥にゆき、筆が紙に軽く触れた墨蹟は彫刻が手前にきている。一筆で描かれた線は、一本の彫刻となる。

 

キュビズム彫刻は、書の文化を知らない人々が、紙に書かれた書の奥行きを容易に理解し、筆捌きを感じることができる唯一の方法。そして、書家の書くその時間軸までもが永遠に刻まれるため、鑑賞者はいつでも反芻することができるのだ。

 

この多角的に文字を再構築する書を「キュビズム」と名付けている。

 

 

 

   

 

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