MEDAA,

生地とファッションへの愛が
細部に宿るスクエア日傘

 2022.9.16

 

ここまでつくり手の気持ちが込められた日傘は見たことがない-----


 

「つくり手の気持ち」という曖昧な表現は避けたいところですが、MEDAA,の日傘にはぴったりなのです。

 

 

表地と裏地にはそれぞれ異なる。相性が念入りに考えられた着物地が張られており、傘の縁にはさらに別の生地が張られています。傘を開くと、傘骨と生地は袋縫いで丁寧に留められていることに気づきます。

 

 

この日傘をつくる方が生地マニアのデザイナーと聞いて、なるほど、と膝を打ちました。技術に裏打ちされた傘職人でも、デザイン性を重視するブランドでもつくれない、生地とファッションへの愛がたっぷり込められたMEDAA,のものづくりをご紹介します。

 

 

MEDAA,の日傘を一本つくるには、生地の裁断から完成まで丸一日かかります。これに生地の組み合わせを考えたりするのを加えれば、一本に相当な時間が注がれています。

 

 

それでも、MEDAA,を主宰する秋山 祐子さんは「傘づくりは全然苦にならないどころか、好きな生地にずっと触れられるので作業している間笑みが止まらないんですよ」と言います。

 

 

MEDAA, 秋山 祐子さん

MEDAA, 秋山 祐子さん

 

 

6年ほど前から傘はつくっていたものの、当時は着物地ではなく普通の生地をつかい、出来上がっても世に出すこともなく放っていたとのこと。その後着物地を取り入れ、販売も始めたのが2018年ころ。

 

 

もともと洋服や生地が好きで、中学生の頃から服をつくっていた秋山さんは、服飾の学校を出て婦人服の企画の仕事に就きます。その後同じ学校出身の仲間とファッションショーを行うなどデザイナーとして活動し、2011年にオーダーメイドでの衣装制作を開始。映画やテレビCMでも使われるなど、評価を高めていきます。

 

 

クライアントのイメージを形にする仕事にやりがいを感じる一方で。予算が厳しく決められていて高くても良い生地が自由に使えないことにフラストレーションを感じていた秋山さん。あるとき、「おばあちゃんの着物の帯をつかって衣装をつくってもらいたい」というクライアントと出会います。それまで着物の生地は素敵、と思ってはいたものの着ることもなく、「着物との接点がなかった」という秋山さんは、たちまちその虜になりました。

 

 

着物はそもそもシルクなど良い糸をつかい、手作業で染められていたり、刺繍されていたりする。携わった人の愛情が込められていると感じます。そんな生地を触ったり縫ったりと、関われるのはとても幸せです。

 

 

という秋山さんは、やがて日傘づくりにも着物地を取り入れるように。

 

 

アトリエにある着物地のストック

アトリエにある着物地のストック

 

 

日傘のために着物地を織ってもらうのは価格的に難しい。なので、事前に日傘のデザインを決めることはせず、既存の生地を見ながら組み合わせをイメージします。秋山さんに日傘づくりの楽しいところと苦しいところを伺ったのですが、そのどちらも「生地の組み合わせ」とのこと。たくさんある生地から、最高の組み合わせがバチっと現れると嬉しい、と教えてくれました。

 

 

巻いた傘を留めるボタンも生地に合わせます

巻いた傘を留めるボタンも生地に合わせます

 

 

着物地でつくるのであれば、傘でなくとも他にいろんなアイテムがあります。なぜ傘なんですか?という問いには、

 

 

傘ってかわいいな、と思ったんです。また、誰でもつくれるもの以外がいいと。日傘は『避暑地でお嬢さんがさしている』ような特別なイメージがあるし、絶対必要なものではないこともよかった。生活必需品は現実的で覚めてしまうんですよね。

 

と答えてくれた秋山さん。特徴的な四角い傘の形については、

 

 

四角い傘があるのは知っていたんです。最初は真四角の傘をつくったんですが、どこかかわいくないので悩んでいました。その後、花の形の傘をつくろうとして角を削ったらかわいくなり、現在の形になりました。

 

とのこと。

 

あるとき老舗の傘屋の社長に自身の日傘を見せたら、「このように傘をつくるには長い経験が必要」と言ってもらったそうですが、実際のところ傘づくりに携わって数年。にもかかわらず完成度の高い傘をつくれるのは、これまで女性の身体にぴったり合わせるドレスを多くつくってきたから。これからも、生地好きで洋服のデザインと縫製ができる、秋山さんだからこそできる唯一無二の一本をつくり続けます。

 

 

MEDAA, 秋山 祐子さん

MEDAA, 秋山 祐子さん